北海道・06夏


『序章』

 

…二ヶ月前

朝の目覚ましを止め、いつものようにPCの電源をいれた。ネットブラウザを開き、履歴から商船三井のページを開く。時間が来るまで繰返しWeb予約の手続きをイメージする。

今日は夏の北海道行きフェリーの予約開始日。茨城県大洗から出る北海道行きのフェリーは、お盆の時期にはあっという間に無くなってしまうのだ。人は乗れてもバイクは載せられないという状態。北海道へ行くライダーにとって気が気でないのが、出港2ヶ月前の9時数分前。

いつもはぐったりしている朝も、この日ばかりは気合いが入る。9時ちょうどに予約記入フォームを開き、必要事項を記入していく。住所などはあらかじめメモ帳に書き込んでいて張り付けていくだけだ。全ての項目に記入を終え、いざ予約ボタンへ。

 

返ってくるのは「大変混みあっています・・・」という無常な文字。

何度繰返しても空席確認のページにたどり着く事ができない。時間だけが刻々と過ぎていく。どこかのサイトで開始15分が勝負と書いてあったのを思い出し、焦りばかりが募る。愛知万博の事前予約の苦い記憶が頭をよぎる・・・。

9時15分

大洗発を諦め、新潟発の新日本海フェリーのHPに飛んだ。去年のGWに北海道に行った時には1週間前でもチケットを取ることができたので、こちらは取れるだろうと高をくくっていたが、こちらはすでに空席無し・・・。

9時30分

もう家を出ないと上司に白い目で見られる。電車では間に合わないので、カブに乗って出社した。6月の風がいつもより冷たく感じた。

 

10時

出発を次の日に延ばし、た明日予約を頑張ろう。と考えているうちに会社にたどり着いた。いつものようにメールをチェックし、何気なく予約ページに飛んでみた。既に満席だろうと思いつつ入力フォームを埋めて確認ボタンを押してみた。

すると、すんなり次のページに飛べるた。あれほど混雑していて開かなかったページが開き、しかも空席若干ありの三角マークがついている。自動二輪も空きがある。もうこの時点で気が動転して焦りは最高潮。カード決済の記入し、無我夢中で予約を確定した。

後で確認したところ、記入したナンバープレートの番号は滅茶苦茶。しかも大型二輪で予約を取っている。大は小を兼ねるというが、よほど焦っていたようだ。

なにはともあれ、最後はあっさり取れた北海道行きのチケット。これでお盆に北の大地に降り立つ準備ができた。

そう、この時はまだ片道切符。

 

 

 

一週間後

本来なら北海道から帰宅のチケットは、行きと同様、帰る日から二ヶ月前に予約を取らなければならない。帰りのチケットもすぐに予約がいっぱいになる。ぎりぎりまで北海道を満喫したい気持ちはみんな同じなのである。

なってた。

休日出勤やら、週二回ぐらい徹夜の作業が続いたため、曜日の感覚はなくなり、北海道のことなどすっかり忘れていた。責任感も義務感もそんなものを飛び越えて、のりだけで仕事をしていたような気がする。

おろおろしながらチケット予約のHPを開いてみると、思ったとおり空席なしの無常な反応。北海道へ行ったはいいが帰れない・・・。

あぁ。。。(漫画のように頭を抱える)

 

 

大洗に帰って来れなくなった。本州に帰ってこれる航路を思い浮かべ、フェリー会社のHPへ飛んだ。

新潟着 空席なし 家まで330キロ
仙台着 空席なし 家まで380キロ
八戸着 空席あり 家まで700キロ

バイクを置いて帰るわけには行かないので苫小牧−八戸のチケットを取った。日本地図を広げてみるとフェリーというより北海道からの渡し舟のような感覚。


日曜の午前9時に八戸に到着し、次の日から仕事か・・・。

久しぶりに本気で走るか。

 

 

出発五日前

休日出勤の帰り道、午前0時にさしかかるころ、久々に懐かしい感覚に襲われる。久々すぎて自分に何が起きているのか、思い出すのにしばらく時間がかかってしまった。

もしかして、あれなのか?

あれだとしたらCLでは初めての経験だ。ふわふわするような感覚、夢なら早く醒めてほしい。交差点を右折したとき、それは確信に変わった。

 

後輪のタイヤがパンクしている。

 

原因は簡単に判った。ゴールデンウィークから後輪に飼っている釘だ。近くのガソリンスタンドで空気を入れてもらうも、すぐに抜けとうとう走れなくなった。家まで軽く7、8キロある。カブみたく押して歩けないのは5分で理解できた。

その晩、CLは棄てて迷わずタクシーに乗りましたよ。

カブのキーも見つからず、頼みのCLもこんなことに…。

トラブルの神が降りた。久々の感覚。

出発まであと五日。

 

 

 

パンク翌日

「今日はなんだか体調が悪いんで、午前中病院に行ってから出勤します。」


(CLが)

会社に電話を入れ、昨夜放置したCLを救出した。やはり釘が原因。パンクしていない前輪もかなり空気が減っていた。北の大地でパンクしていたらと思うと、今回はトラブルの神に感謝しないといけないな…。

 

 

出港17時間前

いつもより一時間早く起床し、出発の準備をした。

荷物をまとめると、今回はかつてない重量になった。鉄とガラスのかたまりのカメラのせいだ。どうせ使わないと思ってもついつい交換レンズの本数が増えてしまう。忘れ物をチェックしCLにくくりつける。久々の大荷物にふらつきながら発進し会社を目指す。

半分ほど来たときに、携帯がないことに気付く。充電器は持っているのに本体がない…。引き返そうかとも考えたが、携帯がなくてもいいか、と考え始めた。会社からの嫌な連絡も入らず、下界から解放された旅を満喫できる。

でも、待てよ。

現地で友と落合う約束をしていたんだ。集合場所と日にちを決めたけど、連絡がつかなければお互い不安になるだろう、特に相手が。

昼休み、会社から家を往復した。炎天下の昼下がりの都心、くたくたになった一時間半の往復。

出港10時間前の悲劇…

 


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