北海道・06夏


『大人』

 

8月21日(土) 
 
夜が開け、ツーリングの神様へのお祈りが通じたのか、雨が上がっている。
 
朝食を食べ、荷物をまとめる。まだ、メットの中が冷たいが襟裳岬へ向け走り出す。黄金道路と名づけられた海沿いの
道。襟裳岬が近づくにつれ霧が濃くなり、体を濡らしていく。
 
 
襟裳岬は想像していたどおり演歌がオートリバースで流れていた。ぐるりと灯台の周りを一周し駐車場で休憩している
と、横浜市ナンバーのCBX125に乗ったライダーがやってきた。このバイク燃費がいいですわ〜と気さくに話しかけて
きたので、話し込んでみると、定年後にバイクを購入し色々ツーリングしているようだ。先月は九州を一周してきて、昨
日北海道に上陸してきたという。今後のルートを聞いてみると、地図を広げて見せてくれた。がっちり、きっちりルートに
赤線が引かれており、その日に泊まる宿も全て事前に予約し、トラブルをなくすため全ての宿のリストをプリントアウト
して持ってきたのを見せてくれた。これはまさに大人のツーリングだ。大人最高だ。これからのキーワードは「大人」だ
と思った。
 
 
ほぃじゃ気をつけてと手を挙げ先に出発した。北上するにつれ霧は晴れていった。日高に入るとサラブレッドが暮らす
牧場が沢山目に付くようになる。この辺りはずっとアメリカンポリスの格好をしたバイクの後ろをぴったり走っていた。こ
の辺りはサラブレッドを育成放牧する牧場が多く競馬ファンの聖地である。サラブレッドが牧場でのんびりしているのを
眺めながら、ずんずん走っていく。途中道の駅「サラブレッドロード新冠」で昼食(特大ホッケ定食)を取った後も、寄り
道することなくフェリー乗り場の苫小牧を目指した。
 
ほぼ一週間北海道に滞在した。行こうと予定していた場所には大体行くことができた。この前、乗鉄(鉄道を乗るのが
好きな鉄道ファン)の人と話をしたら、同じ北海道旅行でも全然行く場所が違っていた。やはりライダーの行く場所はツ
ーリングマップルやツーリングGOGOに載っているライダーならではの場所なんだろう。
 
夕方頃、港に到着した。すごい数のバイクが停まっていた。どうやらキャンセル待ちをしているようだ。片道切符で北海
道に来る人が大勢いることが分かった。来てしまえば何とかなるような気がした。一本早い便に変更しようと受付を訪
ねたが、この時期の八戸行きのバイクの変更は一切受付けていないとのことだった。
 
出発時間の夜12時まではまだまだ時間はあったので、室蘭の街にでもいこうと考えたが、夜の走行にあまり気持ち
が乗らず、途中にあった白老温泉に立ち寄ることにした。ここの湯も昨日入った湯に負けず劣らず黒い湯で、とにかく
熱かった。汗をだらだら流しながら湯につかった。冬なら湯から出てもずっと体がぽかぽかして冷えなさそうだ。温泉
では地元のおじさんたちが甲子園の話で盛り上がっていた。地元苫小牧が明日決勝のようだ。
 
入浴後、吉野家で夕食を取り港に戻った。港に入る交差点で最後のセイコーマート。オレンジの看板の鳥(はと?)が
なんだか名残惜しい。アナウンスでキャンセル待ちの結果が流れていた。アナウンスに狂喜する人たち、肩を落とす人
たち。チケットを取れなかった人たちは今日どうするんだろう?ここで寝られるのかな?明日日曜日で、月曜から仕事
なので片道切符の冒険はしたくない(大人の判断)。
 
売店でお土産を沢山買い込みバイクにくくりつけておいた。バイクだとお土産を郵送するのがベストだと思う。乗船手続
きが始まるまでまだまだ時間があるのでベンチで寝ることにした。
 
乗船案内のアナウンスを聞き、大きな八戸と書かれた紙をバイクのミラーに取り付けフェリーに乗り込んだ。バイク組
みが一番乗りだったようだ。まだ船内清掃中で中に入れない。バイクのナンバーを見てみると、東北ナンバーの中に
東京や神奈川のナンバーを見つけることができた。さすがに関西ナンバーは自分ひとりだけだった。
 
今回は二等雑魚寝しか取れなかったので、船内に入るとすぐに隅のスペースを陣取った。後から後からどんどん人
が入ってきて、足の踏み場もないほど人手溢れている。はじめとなりとのスペースも多めに取っていたのに、そこにま
で人が入ってくる始末。部屋に入りきらずに通路に毛布をひいて寝床を作るほどの混雑振り。定員オーバー以上の予
約を取ったんじゃないかと疑うほどだ。
 
時間が時間なだけに出発するとすぐに電気は消され黙って寝るしかない。難民船のような船内、テント寝袋のほうが
はるかに快適だ・・・。
    

  

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